ビズスト|BIZ STORY

 

教育業界の課題に挑む、学習者の継続を支援するEdTechアプリの秘訣とは

スタディプラス株式会社 廣瀬 高志

今回は、EdTech(エドテック)領域の事業で活躍をされている廣瀬様のビズストーリーをお届けします。

こんな方におすすめ
・教育ビジネスに興味がある方
・toC・toB両軸でのビジネスを考えている方
こんなことが学べる
・時代に合わせたサービスと会社の動き
・数少ないEdTech(エドテック)領域のビジネスモデル

学習者の学習継続の悩みをアプリで解決する

事業内容について教えてください。

当社は「Studyplus」と「Studyplus for School(スタディプラスフォースクール)」という2つのプロダクトをやっています。まず「Studyplus」というのが当社のメインのサービスで、主にスマートフォンのアプリで学習の記録、管理、共有っていうところで、1人だとなかなか挫折しがちな学習の継続っていうところを支援するサービスになっています。現在、日本の大学受験生の2人に1人以上、大体60%ぐらいの方に使っていただいています。

あと、「Studyplus for School」は塾や学校向けの学習支援のサースになっておりまして、「Studyplus」とセットで使っていただくのですが、先生が生徒の学習状況をオンラインで把握した上で、生徒さんの学習に対して「いいね」や「コメント」などのメッセージを通じてオンラインで励まして支援していくことができるというようなサービスです。河合塾さんを始めとして、大体2,700教室ぐらいの学校や塾に、導入いただいている事業を展開している会社です。

-ありがとうございます!実際に社内にStudyplusを利用していた子がいるので今日がとっても楽しみでした。アプリとスクールの事業があるとのことですが事業の始まりとしてはどちらからなのでしょうか?

アプリの方は2012年から、Studyplus for Schoolの塾向けのSaaSの方は2016年からやってます。

-スクール向けに始めた理由はあるのでしょうか?

そうですね。1番最初のきっかけとしては、代ゼミ(代々木ゼミ)さんと一緒に始めたみたいなところがありまして。「塾の中でもっとStudyplusが使えそうな気がするから、そういうの作ってくれない?」みたいなこと言われて始まったって感じですね。

-きっかけがあって塾でも使われるようになったんですね!ではそもそも先に始めたアプリは「大学生の2人に1人が使っているとのことですが、アプリを普及していくにあたってやってきたことってあるのでしょうか?

会員の方がStudyplusを知るきっかけっていうところで言うと、実は1番大きい大部分が「口コミ」なんですよ。なので当社はほとんど広告宣伝をしたことがない状況でして、ずっと口コミでユーザーが増えている状態です。やってきたこととしては「とにかくいいサービスを作る」「今使っていただいているお客様により満足していただけるように、より良い機能提供をしていく」ということをずっとやってきました。

起業された背景を教えてください。

元々大学4年生になる直前の2010年の3月に、ある企業が学生向けにやってるビジネスコンテストに参加させていただきました。その際に優秀賞や優勝をさせてもらって、「オフィスを1年タダで使っていいよ」と言っていただいたんです。「これはチャンスなんじゃないか」と思いましたね。コンテストに出したプランが、今の「Studyplus」の元になるアイデアになるんですけれど、当時大学4年生になる直前ぐらいなので、就活も多少してましたが就活は辞めて起業したって感じですね。

-そうなんですね、結構学生起業された方でも卒業までは大学に通い続けるという方が多かったのですが、中退された方は取材の中で少なくて……大学を中退してでも事業に振り切れた理由などはあるのでしょうか?

僕が小学生ぐらいの時から「将来は社長になりたい」と周りに言ってるみたいな子供だったんですけど。なので中学、高校の時とかもいろんな経営者の方の書いた本とかを結構いっぱい読んでいたんです。

当時、僕が大学に入学した2007年は第2次ネットバブルと言われるような時代で、ホリエモンさん、サイバーエージェントの藤田さんとか「ヒルズ族」みたいな時代でした。ライブドアがフジテレビを買収するかもしれないみたいな話題になったのが2005年で、ライブドアショックが2006年です。当時高校生だったので、インターネットの会社がどんどん大きくなって時代を変えて行く、みたいなところの急激な社会の変化を感じながら、すごく憧れを持ってたって感じでした。

事業成長の秘訣は地道な口コミと信念

競争優位性について教えてください。

ここまで事業を伸ばしてこられた要因ってどこにありますか?

なかなか「Studyplus」をリリースしてもマネタイズが難しいんです。

というのも、勉強することがメインのサービスなので、1億2000万、3000万人がみんなユーザーというわけじゃなくて、勉強する人が基本的にターゲットユーザーになりますし、結果的には大学受験生が1番多く使ってくれたっていう感じだったんです。

実際、リリースした当初から「ユーザーのレビュー」が非常に高くて、「Studyplusのおかげで、志望校に受かって3日坊主だった自分が勉強を続けられました!ありがとう!」みたいな、そういう声をたくさんいただきました。ものすごく手応えは感じていたものの、会員数やアクティブユーザー、口コミでユーザー数もジワジワ伸びていきました。ただ、1年で「100万人になります」とかそういう急成長はなかなかしなくて。

主なメインユーザーは高校生なので、直接課金はなかなか難しいという中で、Studyplusは広告がメインの売上なのですが、広告の売り上げを作っていこうと思うと、多くのユーザーに使っていただかないとそもそも広告も売れないんです。

リリースしたのが2012年ですが、売上がある程度立ち始めたのは2016年ぐらいなので、リリースしてから最初の4年ぐらいは売上がほとんどないみたいな感じだったんですよね。

なのでその時期はすごく大変でした。その時に考えていた、学習する人にとって1番の課題は「勉強を継続していくのが難しい」ということなので、この課題を解決するってことにフォーカスしてやってるサービスは他にない!ということです。EdTech(エドテック)と言われるIT×教育のサービスで言うと、ほとんどは教材コンテンツなんですよね。

映像事業や英単語のアプリとか……色々あるんですけど、僕たちみたいに学習管理や学習の継続を促す学習管理アプリをやっているサービスって他に全然ないので、こういったものはすごく必要だろうと思い、信じてここまでやってきました。

-良いモノ・顧客のためというところの思いが強いのかなと思うのですが、苦しい状況だった時どのように乗り越えてこられたのでしょうか?

ベンチャーキャピタル(VC)などからの資金調達をしてきて運営してきました。当時は今ほどたくさんVCがなかったり、年間の総投資額も多くありませんでした。直近10年ぐらいですごく右肩上がりになって8000億ぐらいだったと思うんですけども、10年前は800億ほどでした。

僕がその創業期にマネタイズに苦しんでいた時期って、まだ今から比べると1/10ぐらいの感じだったので、資金調達環境としては今より全然悪かったんです。ただその当時はスマートフォンが一気に普及してくるっていうタイミングでした。

「Studyplus」をリリースしたのが2012年なので、当時の高校生のスマートフォン普及率はまだ2〜3割ぐらいでしたが、2015年〜2016年になると9割ぐらいになり、一気にスマートフォンの普及率が上がっていきました。

スマートフォンの成長とともに、Studyplusがユーザー数拡大していった背景があるのですが、そういった中でVCの投資をする対象としてもスマートフォンを使ったアプリ、特にfacebookやX(旧Twitter)などのSNSも出てきてる中で、何かの業界に特化したSNSっていうところは、ビジネスチャンスがあるんじゃないかと考えられていた方もいました。

特にmixiさんから2013年に投資を受けてるのですが、mixiさんもまさに「mixi」というSNSをやりながら特化型のSNSにも注目されてたこともあり、ご評価を受けて投資をいただいた背景もあります。

成長ドライバーについて教えてください。

-これから事業を伸ばしていくにあたって課題になりそうなポイントはありますか?

今すごく注力していこうとしてるのはやっぱりAIです。ChatGPTやOpenAIを始めとして、いろんな会社がLLM(大規模言語モデル)を作って開発競争をして性能が上がっていきますが、一方でどんどんコストが安くなってくと言われています。つまり、AIの民主化とも言われていますが、AIを自分のこのサービスにどう組み合わせて、組み込んでいくかが非常にやりやすくなっていると思います。

こういったものをうまく使って、僕たちが提供してる価値をさらに増やしていったりとか、逆に広げていったりすることができるんじゃないかと思っているので、ここに注力していこうという方針で動いています。

-アプリとAIは相性良さそうですもんね!そしたら社内もかなりAI活用をしていこう!という感じですね!

そうですね、進めていこうっていうところをむしろ旗を振ってるっていう状態です(笑)特に、当社は全部内製で開発をしてますのでエンジニアがいるんです。特に最近で言うと、コーディングエージェントと言われる「コードを書いてくれるAI」が日々現場で進化をしているというところなので、こういったところは積極的に活用していこうってことを言っています。

あとは各部署でもAIを活用したり自動化できるんじゃないかっていうところを社内でも話し合って取り組みを始めてるっていう感じですかね。

-これからの展開に興味あります!他には何か取り組まれていることや考えられていることはございますか?

社内的には「Studyplus2.0」と呼んでる話で、我々スタディプラスが「学習の継続を支援する」っていう価値を提供することをずっとやってきたんですけれども、その中で新たに気づいた教育や学習に関わるまた別の課題として、進学、進路の意思決定っていうテーマにチャレンジしています。

どの大学に進学するのか、どの学部や学科なのかという意思決定に課題が大きいなと思っていまして、4年間通うわけですし、一生ついて回りますし、人生にとってかなり重大な意思決定の1つなのかなと思うんですよね。にも関わらず非常に限られた情報だったり、特に偏差値だったりとか、そういった限られた情報で進路を選択してしまっている現状があります。

でも、高校生の立場になった時に、大学の数も非常にたくさんありますし、その中で学部の数もものすごく増えていて。自分にとってどういう進路が最適なんだろうっていうのを考え、意思決定していくのは難しいだろうなというところは感じているんです。

進学の意思決定や高校生と大学のマッチングの最適化を、Studyplusは学習の継続を支援するサービスっていう特性上、早い人だともう中学3年生とかぐらいから高3の終わりまで使い続けるサービスなんですよね。

その中で、進路も考えるタイミングっていうのは時々来ますし、勉強しながら進路を考え続けていくことも非常に重要なので、そういった進路の意思決定やマッチングの最適化をしていくプラットフォームとしても非常に良いものになり得るのかと思っています。

なので、Studyplusのプロダクトを今年の4月に大幅にアップデートをして、進路の意思決定もサポートしていくような機能だったり、コンテンツを拡充していく方針なんですね。

それができると、より進路の選択肢っていうのを増やしていくことができるし、ミスマッチを減らしていったりすることができるので、そういったところにも挑戦しています。

起業する方へ「軸をぶらさない」が信念・哲学

廣瀬さんの考える『経営』について教えてください

廣瀬さんが経営をする上でこだわっていることはなんでしょうか?

「軸をぶらさない」ことかなと思っています。と言うのも2010年から会社をやっていて、4月から16期目になるので年数が重なってきた感じではあるんですけれど、僕たちのやりたいことの考え方のコアな部分っていうのは「教育は学習者のためにある」というところですね。

なので教育は「教育=授業」や「教育=教材」ではなくて「教育=学習支援」であり、学習者の課題解決です。じゃあ学習者にとって1番の課題ってなんだろう?っていうところが学習の継続なので、Studyplusやフォースクールでやることで、コアの考え方とプロダクトが、すごく密接に一直線で繋がっています。やっぱり何が課題なのか、何が大事なのかってことに対して、ブレないことがすごく大事なのかなと思っていますかね。

-ありがとうございます。大事にしている軸の部分を社内に浸透させるために何か取り組まれていることってありますか?

そうですね、まずスタディプラスのバリューを去年作り直しまして、その中で1番最初に掲げてるのが、「学習者を第一に考える」っていうことなんですよね。

これがスタディプラスの原点であり、今後も核となる考え方であるということで、バリューカードを作って、名刺大のサイズにで折り畳めるものを、みんなに「できるだけ持ち歩いてねみ」と言って常に身近にあるようにしています。

あとは、「Value award」というものを半期に1回やってまして、当社のバリュー体現をしてる人を表彰して、ちょっとした賞金みたいなボーナスを出したりもしていますね。

ピアボーナスでは従業員同士で日々の感謝や賞賛をできる「Unipos(ユニポス)」を導入しています。その中でも、バリュー体現しているとか、「#学習者第一に」みたいなハッシュタグをつけてポイントを送ったりとかできるので、バリュー浸透に関しては結構いろんな形でやってますね。

あとは、朝会を月に1回やってるんですけど、その中で僕が話すパートが毎回あるんですけど、結構バリューに紐付けた話をすることも多いですかね。

-社内への浸透って結構課題に上がることが多いのですが、貴社は特に徹底されてますね!従業員さんもやりたくなる仕組みになっているなと思いました!

色々なご経験から、起業当初(社長就任当初)の自分に対して、気をつけるべきことや落とし穴になりそうなことがあればアドバイスをください!

自分が本当にやりたいことをやることが大事なんじゃないですかね。

このEdTech(エドテック)領域は他の領域と比べても難しいって言われていまして、なら、「カスタマー」と「クライアント」がちょっと違うんです。

アプリを実際に使うユーザーとお金払う人がちょっと違ったりとかしますし、あとは教育業界が結構アナログレガシーで、なかなか変わっていかないところがあったりします。

少子化の影響も当然ありますし……みたいなところで、結構難しくて途中で辞めちゃう人が多いんです。そんな中で僕自身もモチベーションが高く、今もずっとやり続けられている背景っていうところで言うと、僕たちの提供する価値のコアの部分を信じているし、それが本当に「社会のためになる」と思っていると言う部分が大きいかなと思います。なので起業する上では、すごい当たり前というか、本当に根本の中の根本なんですけども、そういうところが重要なんじゃないかなと思いますかね。

メンバーに「本当は伝えたいけど、伝えられていないこと」

このスタディプラスに参画して、同じ船に乗ってくれてありがとうございます。

今15期目ですが、僕としてはスタディプラスとしての挑戦はまだまだ始まったばかりだと思っています。教育や学習の領域はそう簡単には変わらないっていうところがある一方で、すごく足の長い挑戦だと思ってるので、そこに向けて長期的に一緒に挑戦してやっていただけたらなって思っています。

これからの夢や目標を教えてください

この「教育」というのは、全ての人の人生において最も重要なことの1つだと思うんですよね。なのに教育や学習のあり方は、なかなか変わっていない現状がありますが、そこをすごくより良い方向に変えていく。では、「より良い方向ってなんだろう?」って言った時に、「教育者中心の教育ではなくて、学習者中心の教育」という方向に変えていくことが必要だと思っています。それって本当にすごく意義があることだと思いますし、自分のやりたいことでもあるので、ひたすらやっていきたいなと思っています。

スタディプラス株式会社からのお知らせ

大学受験生の2人に1人以上が利用している学習管理プラットホーム「Studyplus」です。2025年4月には新機能を導入しリニューアルを予定しています!

https://app.studyplus.jp/

▼スタディプラス株式会社ではエンジニアを募集しています。カジュアル面談もこちらから受け付けています!

https://tech.studyplus.co.jp/recruit

▼社員インタビューや会社のカルチャーについて記事を掲載しています!ぜひご覧ください

https://note.com/studyplusinc

スタディプラス株式会社

代表取締役CEO 廣瀬 高志

1987年生まれ。慶應義塾大学法学部在学中の2010年3月、ネットプライスドットコム (現BEENOS)主催のビジネスコンテストに優勝。2010年5月、スタディプラス創業。
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