広報やPRの伝わらないを「言葉」で解決する
事業内容について教えてください。
はい。「言葉プロデューサー」という肩書きで広報のお手伝いをしています。例えば企業やお店などの商品の魅力を見つけて、それを言葉にして、どうやって届けるのか、までをご支援するお仕事です。社員の皆さんが情報発信できるよう、広報担当の社員さんの育成サポートなんかもしています。伝えるというのは言葉だけに限らないので、営業の経験を生かして、営業ロープレをすることもありますよ。
-営業のロープレもですか?幅広いですね!
そうなんです。お客さまに正しく届けるところまでが『伝える』ことだと思っているので、商品やサービスを広めるための施策や企画をして、ツールを作ったり、商談に使ってもらったりもしています。
-フロントは広報として企業さんに入るけど、最終的には広報〜営業・採用まで「言葉」を使って外部に発信する部門にも関わっているということですもんね。
そうですね。だから、採用のお手伝いもしています。
結局「魅力を届ける」ということに関して、広報は全て繋がってくるんですよね。外にばかり良い事を言っていても、社内にそれが伝わっていなければ、外部と内部のズレが生じてしまいます。そこはちゃんと足並みを揃えていかないといけなくて。では、社内のコミュニケーションを高めるためには?という話になるので、社内広報を見直すこともしています。
-すごいです!私もこれまでずっと営業だったのですが、自分の関わったことのない業界に入って何か言葉で伝えるって結構難しいなと思っていて、ここはどういう風にクリアされているんでしょうか?
関わったことがないからこその視点が活かせると思っています。私の前職は建築だったんですけど、物づくりをされる方は、皆さん「職人さん」なんですよね。
職人さんの中には、魅力を表現するのがちょっと苦手な人もいます。建築で例えると、家の説明をするときに、つい自分たちの細部のこだわりを伝えたくなりますが、お客様はもっと広い視点の話が聞きたいと思っている…なんてこともあると思います。
-心あたりあります…
知らないからこそ、業界や会社を客観的に見られる視点は誰しも持ってるんですよ。私はそこを活かして魅力を言葉にしているので、ご支援する業界に縛りはありません。広報には、冷めた視点が欠かせないと思っていまして。実は、私はあまり何にも興味がないので、向いていたのかもしれません(笑)。
-深いですね、興味がある方が広報ができそうな感じがしていました。
興味があることだと、どうしても私情や自分の“好き”の視点が入ってきますよね。実際は、PRを目にする人は、大抵が「その商品に興味がない人」だと思っているので、そういう人の心をどうやったら動かすことができるのか、を常に考えながら言葉にしています。
立ち上げに至った経緯を教えてください。
元々独立したい気持ちはありませんでした。会社は好きでしたし、定年まで働くつもりだったのですが、会社が成長し、それに伴って私も心境の変化があり、自分の未来図が見えなくなっていました。そんな時に始めたSNSがきっかけで、いろんなご縁が生まれて独立に繋がったんです。
-SNSきっかけでの独立ってすごいですね!具体的にどんなきっかけだったのでしょうか?
Twitter(現在X)をしていたのですが、思いのほかフォロワーが増えて、色んな方から「会いたい」と言われるようになったんです。それが何故か経営者の方が多くて。全国の色んな方とお会いして仲良く遊んでいただけなんですが、それが自然とお仕事に繋がっていったという感じです。当時48歳だったので、転職は難しいだろうと自分で判断をして、「仕方ない、自分でやってみるか…」みたいな感じで独立しましたよ。
-えーー、遊んでいてお仕事につながるってどういうことですか?
飲み会の席なんかで、事業の相談を受けることがあるんですよね。それで私の意見をお伝えしたら、「じゃあ佐藤さん手伝ってくれる?」という感じで依頼されました。皆さん、私の実績を見ずに契約しようとするので「過去の実績を見ていただいてからのほうが…」と私のほうから言うんですが、「佐藤さんのセンスは、SNSを見てたら分かるから必要ない」と言われて…驚きました。
-すごいですね。佐藤さんは元々文章を書くことが好きだったのでしょうか?
元々書くことは好きでした。専業主婦の時に、毎日新聞社のライターをやっていたことがありました。前職では、入社当時、会社の情報を発信する人がいなかったので私が担当になり、集客や販促・ブランディングに携わりました。そうするとたくさんお客様が来てくれるようになったんです。「文章を書く」ことと「魅力を言葉にする」ということが、うまくマッチした形でした。ここでの経験が、今のお仕事に活きています。前職には感謝しかありません。
-素敵ですね!佐藤さんの独立の経緯が「これがやりたいから!」ではなくて色々な方から相談を受ける中で「じゃ佐藤さんお願いします!」と依頼されているという点からの独立なのが良いですよね。
1人社長だからこそ「自己開示」
競争優位性について教えてください。
-数ある広報業界の会社さんと比べた時に貴社の強みはどこになりますか?
私は1人社長でやっているのですが、有難いことに営業をしなくてもお問い合わせやご依頼をいただけている状態ですね。
-え!すごいですね!私も1人社長に当たるのですが営業はしていました。その秘訣ってありますか?
そうですね、私のような仕事をしている方は世の中にたくさんいます。そして実績という面では、上を見ればキリがありません。特に独立したての頃は、実績と言えることが殆どなくて、どうしようかと思いました。
こんな私を選んでいただくには、私と「仕事をしたい」と思ってくださるか、「好きになってもらう」しかないと思っています。だから、私が普段何を考えていて、どんな人間かをかなり自己開示している、というのが大きいかと思います。昔から私を知ってくださった方からも声をかけていただき、本当に有難かったです。
-そうなんですね。やっぱり創業当初って「サービスがいい」か「自分で売る」の2択だと思っていて、社長は売上がない段階であればコストをかけずにできることはやっておきたいと思うじゃないですか。ただ発信しているだけで人に伝わらなくなってしまうこともあると思うのですが、佐藤さんの中で発信のコツってあったりするのでしょうか?
どうでしょう、「伝える」ということも、誰に何を伝えるために、どこを切り取るかという視点が大事だと思います。 それをどんな言葉にするのか、ですね。時事性と自分の体験談を絡めて発信することもあれば、くだらない笑い話をひたすら発信したこともあります。これはいける!と思ったのがすべって、意外なネタが受けたりするので本当に分かりませんね。万人受けを狙わず、自分の体験を自分の言葉で表現することが大事ではないでしょうか。
-なるほど、ありがとうございます!それなら誰でもいますぐに発信内容を見直して実行できそうですね!
そうですね。みなさんSNSを宣伝やPRの場と思っておられる方がいる印象ですが、SNSは「コミュニケーションありき」なので、まずは交流しないと意味がないと思っています。あとは、自分が何者かをプロフィールでちゃんと表現するのも大事です。私はプロフィールをかれこれ数百回は書き換えています(笑)。
あとは、色んなSNSがあるので、どう使い分けるかですね。私も自分なりのルールがあります。
-Linkedinは本当にビジネスの話だけみたいな感じですか?
皆さん最近は色んな使い方をされていますね。セミナーをしたり、宣伝や営業をしたり。でも私は、Linkedinでは仕事の話はほぼしたことがないんですよ。私の場合、社名や実績を公表できないケースもあるので、プライベートを中心に発信しています。それなのに、Linkedinで思いもしない企業から、「お仕事一緒にしたいです」と言われた時は、すごく驚きました。
-Linkedinでそんな出会いがあるんですか!ビジネス向けのSNSとはいえ、個人の発信は強いですね。
モノで売るのではなく、コトを伝えて売る、ということかもしれません。世の中には、似たサービスはいくらでもあるので、 やっぱり最後は「人」で選んでいただくことになると思います。そのために、素の自分を普段から出しておこうという気持ちで発信しています。
-やってみます!今日からできますもんね。
そうです!大田原さんの生き方や人生体験に、「面白い」「それいい!」と、共感していただいたり、この人と1回喋ってみたいと思ったりしてもらうことが大事ですよね。それから関係を深めて、その後に商品を買ってもらうかどうかの話になるのが普通じゃないですか。
でもSNSでは、認知されてもいなくてファンにもなってもらっていないのに、いきなり「これ食べて!これ食べて!」って口に突っ込んでいくような、そういうことをする人がいますよね。すごくもったいないです。
-なるほどな。これは本当に誰にでも当てはまりますね。今から起業する人もそうだし、なんなら起業する・しようとしてる人こそ、今までの経歴の話や人生どう生きてきたかを今からちょっとずつ発信しておくのが1番いいですよね。
今はストーリーで物が売れる時代と言われています。商品1つとっても、どんな人がどういう思いで、どう生み出したのかという、そこのストーリーがすごく大事。
例えば「アンパン」も、北海道の小豆を使って通常の1.5倍の量で、もちもちの生地に…というと、モノだけの説明ですよね。美味しそうと思われるかもしれませんが、他にも似たアンパンはありそうですよね。でも、これならどうでしょうか。「パン屋を創業した僕の祖母が、貧しかった時代に、子ども達に甘くておいしいパンを食べさせたくて、5年間試行錯誤して、旦那さんの反対を押し切って開業して以来30年一番人気のアンパンです」というと、アンパンが物語になるんですよね。自分にしか語れないストーリーを考えてみられると良いと思います。
-確かにそうですね。
経営者の方は、お仕事を依頼される際、その商品以上に、「どんな人なのか」を重視される方が多いと思います。相思相愛でお仕事するのがお互い最高の形ですよね。私も、お互い共感し合える方とお仕事をご一緒したいので、お会いしたら自分の想いを伝えることを大事にしていますし、SNSでも自分なりのストーリーを発信しています。おかげで、今ご一緒できているのは素敵な社長さん、会社ばかりです!
「目の前の人を思うこと」を大切に
-『企業哲学』について教えてください
1つ目は「目の前の人を好きになる」。2つ目は「目の前の人を楽しませること」。3つ目は、「定期的に未経験のことをやってみる」。この3つはすごく大事にしてます。営業時代は「1商談につき1爆笑」っていうのを、大事にしていましたね。
-私も「1商談につき1笑い」って言ってました!
最初は経験がない中で営業をしていたので、とにかく「楽しかったな」「来てよかった」と思って帰ってもらうことを目標にしました。そうすると、気づいたらご契約いただけるというのがたくさんあったので、今も目の前の人を楽しませることは欠かせないです。追加であとひとつ、「自分の実績を信じすぎないこと」ですね。
「私はこれだけやってきた」ということを自信に変えるのは良いと思いますが、 私のように年齢が50才を過ぎると、あぐらをかいてしまったり自信過剰になったりしてしまうかもしれません。 だからこそ若い人から勉強させてもらって、常に頭を新鮮にしておきたいと思っています。
-佐藤さんの思う『社長』とは?
社長とは…ひと言で表すと「変態」ですかね。
-それはもう「極めに極めた」方の変態ですよね?(笑)
そうです(笑)本当に良い意味の変態です。親しくさせていただいている社長さん達は、素敵な人柄で、個性的で楽しいキャラクターの方ばかりです。ご自身の表現方法は皆さんバラバラですが、根っこの部分には、本当に強くて熱い思いを皆さん持っていらっしゃって。独立してみて思うんですけど、色んなリスクを背負って経営するって本当に変態だよなって。会社員のときには分かりませんでした。だから、世の中の社長さんは皆さんホントすごいなと思っています。「変態」は私の中では最高の褒め言葉なんです。「〇〇さん変態ですよね」って言ったら、「そうなんだよ」って嬉しそうに受け入れる社長さんばかりで(笑)
-確かに持っているキャラクターや表現の仕方って本当にバラバラですよね!
そうですね。社員さんやお客様のことを思っている方ばかりなので、社員さんや社会に夢を与えていく人が社長さんなんだと思います。
-佐藤さんが社長になる前に戻れるとしたら、やりたいことややっておきたいことはありますか
自分が興味を持ち、行きたいと思ったときは、できるだけすぐ行動する方がいいっていうことですね。私がそうだったのですが、主婦の人は特に、子供がいるからとか、旦那さんに許可取らないといけないからと、できない理由がすぐに浮かんじゃうんですよね。今思えば、自分が変わることを自分が許可していなかっただけだったのかなと。本気じゃなかっただけで、本当に行きたかったら多分行ってたんだろうと思います。
-確かにそうですね、本気で思っていたらできる方法を考えますもんね。
だから、これをやりたい!って思ったことは、周りのせいにせずに、ちょっとでも行動に移してみることをもっとやっておけばよかったかなと思います。そうすれば、未来がもう少し早く変わったのかなと思いますね。
–主婦の方だけでなくやらないことの理由を探している人には刺さりますね。
私もそうだったんです。「子供もいるし働いてないしできるわけない」とか、常にそういう考え方が染みついてしまって、今思うとネガティブな思考に陥りがちでした。でもそれは、皆さんが自分の価値に気付いてない、自分が何も取柄がない人ぐらいに自己肯定感が下がっている状態なのではと思います。主婦って褒めてもらえる機会がホント少ないので。
私は離婚して子供も巣立ち、今1人暮らしになって初めて、今まで自分がいかに家族のために時間を費やしていたかに気づいたんですよ。1人暮らしをしていなかったら、多分気づかなかったと思うんです。自分を最優先して時間を使えるってこんな感じなんだ!めっちゃ楽ちん!と(笑)。だから、初めて自分を褒めたくなりました。主婦の皆さんは気づいてないかもしれないけれど、それぐらい家族のために頑張っておられるので、自分を褒めてあげてほしいです。
これからの夢や目標を教えてください
1番の目標は当然ですが、私と関わってくださっているクライアントの事業を、より伸ばしていくお手伝いをすることです。
2番目は女性キャリアについて、私の想いを広くお伝えしていきたいです。「主婦こそキャリア」なんですよ。女性の力をもっとたくさんの方に知って欲しいし、ご自身にも気づいてほしい。
同世代はもちろん、大学生や、これから結婚出産を迎える世代の方にお伝えするような場面があれば嬉しいですね。私の体験を通して、元気になる方や「私でもできるかも」と思ってもらえるようなお話をする機会を増やしていきたいです。
-ありがとうございます!私も佐藤さんとご一緒できるようにママさんに向けたお仕事の機会提供を頑張ります。
ありがとうございます。ぜひ!
活躍されている女性の方を見て、高学歴や生まれ育った環境が恵まれた方だと、「あなただからできたんでしょ?」ってなっちゃうじゃないですか。でも私は全くそうではない主婦の1人なので、「私にもできるかも!」と思ってもらいやすいと思うんですよね。 私だから届けられる言葉があるので、皆さんに知ってもらえると嬉しいです。そのためには、まずは私自身が活躍しなきゃですね。
まとめ
佐藤さん、ありがとうございました!私の目標である日経xwomanに掲載されている佐藤さんですが、きっかけは今回の話題にもあるLinkedinという経営者の方が多いSNSでした。女性の働き方について実際に経験してきたからこその発信に「絶対話を聞きたい!」と思ってお声がけしました。佐藤さんのように自分で一歩踏み出して「主婦」というのはキャリアだと発信している方がいることを多くの主婦の方や主婦と関わる経営者の方にも知っていただきたいなと思います。
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