株式会社リジョブ 鈴木 一平
今回は、人材領域の事業で活躍をされている鈴木様のビズストーリーをお届けします。
- こんな方におすすめ
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・社会課題をビジネスを通して解決したい方
・部分ではなく一気通貫で事業やコミュニティ創りに携わりたい方
・美容/ヘルスケア/介護業界の課題に関心のある方
- こんなことが学べる
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・働き手不足の時代における事業戦略のヒント
・強い組織を創っていくための考え方
・ピンチを乗り越える意思決定に大事な視点
株式会社リジョブ 鈴木 一平
今回は、人材領域の事業で活躍をされている鈴木様のビズストーリーをお届けします。
リジョブでは「人と人との結び目を増やす取り組み」として、2つの領域でサービスを展開しています。
1つ目は「ソーシャルビジネス領域」で、美容・ヘルスケア・介護といった、技術とサービス提供を通して心の豊かさを届ける“おもてなし業界”を、業界従事者の育成・雇用・活躍ステージを一気通貫で支援するSPA構想(後述)を主軸としたソーシャルビジネスを展開しています。
2つ目は「ソーシャルコミュニティ領域」で、途上国の貧困課題・遊休農地の活用・過疎地域の雇用創出といったご縁ある社会課題に向き合い、途上国の方々が経済的に自立するためのセラピスト養成講座の実施や田植え・稲刈り体験を通したコミュニティ創りなどの、さまざまなプロジェクトを推進しています。
このように、「業界課題解決と収益を両立し、持続可能な発展を実現する」ソーシャルビジネスと「経済性だけでははかれない、人とのつながりを価値とする」コミュニティの両輪で「経済性と人とのつながりを包括した価値提供」を目指す、リジョブ独自のソーシャルモデルが生まれました。
今回は、ビズストの読者様に向けて「ソーシャルビジネス領域」の話に重点を置いてお話しさせていただけたらと思います。
–ありがとうございます!おもてなし業界の課題や、ソーシャルビジネス領域の中心となる構想について教えてください!
まず前提として、リジョブが関わる美容業界は、小学生の「将来なりたい職業」に上位ランキングする憧れ・やりがいにあふれる業界であるとともに、慢性的な人材不足や高い離職率といった課題を抱えています。これらの業界課題は、美容業界の大部分を担う個人サロンや中小企業様にとっては死活問題です。
その他にも、休日の少なさや賃金の低さ等のさまざまな課題を抱えており、夢をもって折角美容業界に飛び込んでくれる方がいても、働き始めて3年で約6割が離職してしまうのが現状です。ただでさえ日本全体の就労可能人口が減少していく中で、業界支援に携わる企業として何か手を打たなければ、さらに美容業界の成り手、すなわち「技術やサービスを通した、心の豊かさの提供者」が減少してしまうという危機感を私たちは持ちました。
リジョブは創業当初、「採用コスト」という美容業界課題を解決するビジネスモデルを構築し、当時業界初となる「月々のシステム利用料を低価格に抑え、採用決定時の成功報酬にウェイトを置くプラン」による美容・ヘルスケア業界に特化した求人メディア『リジョブ』をスタートしました。このプランが個人オーナーを中心に支持されたことで、業界の採用コストを従来の約1/3に削減する改革に成功し、サービス開始後5年目には業界トップクラスのシェアを獲得したのです。
但し、国内の労働人口減少が明確に起きている中で、雇用支援にあたる求人メディア事業のみを営んでいては、業界に対する貢献幅が少ないのではないか、より貢献幅を増やし、長く業界従事者に活躍いただくためにはどのような構想を持つべきかと、私はリジョブ代表を引き継いだ後、常に考えていました。
そこで、未来の業界従事者となる方を支援する「育成支援」、業界に従事される方と企業様を結ぶ「雇用支援」、そして、雇用がスタートした後に、業界に従事される方がその人らしく長く働き続けられる「活躍支援」の取り組みを、育成⇒雇用⇒活躍のステージを一気通貫で支援する、『美容業界のSPA構想』を構築しました。
メインとなる事業は雇用支援の求人メディア『リジョブ』ですが、ここで得られた収益を育成支援・活躍支援の事業や取り組みに回す事で、中長期的に育成⇒雇用⇒活躍支援が循環し、業界の持続可能な発展と、リジョブの成長にもつながっていくことを考えています。
–では「美容業界のSPA構想」について、具体的に教えてください!
リジョブでは美容業界の持続可能な発展のために、求人メディア運営に留まらず、『多様な働き方の選択肢を広げること』『サロンと求職者の価値観がマッチする雇用機会を増やす』というアクションを通じて、業界従事者が「長く、その人らしく」働き続けられるようにと「SPA構想」を考案しました。
SPA構想は、
・育成支援
・雇用支援
・活躍支援
の3つのステージからなります。まず、「育成支援」の取り組みを通して、未来の業界従事者のキャリア設計をサポートし、「雇用支援」事業を通じてサロンと求職者様の価値観や想いを結ぶ雇用マッチングを増やしていきます。そして「活躍支援」を通して業界従事者の多様な活躍ロールモデルを発信することで働き方の選択肢を提示し、次世代の育成につなげる好循環を生み出したいと考えています。
それぞれの支援の概要は、
・育成支援
業界で将来的に活躍する人材の育成を目的とした、美容専門学生対象の返済不要の給付型『リジョブ奨学金』の支給や、次世代のキャリア設計サポートを目的とした出張授業『リジョブカレッジ』の開催、卒業ヘアショーイベントへの協賛など。
・雇用支援
採用コストを抑えた美容・ヘルスケア業界特化型の求人メディア『リジョブ』を運営。業界最大級の求人メディアとして、企業様と求職者様の「価値観のマッチング」を重視している。
・活躍支援
グループ会社リザービアによる、自社集客・予約管理システム『reservia』の提供により、集客できるお店づくりをサポート。また、美容師の多様な働き方・活躍の在り方を発信する業界応援Webマガジン『Moreリジョブ』や、業界従事者の想いを尊重し広める『リジョブアワード』などを実施。
となります。
そして、私たちは事業や取り組みと社会課題解決をリンクさせる「CSV経営」を推進しており、そのひとつがSPA構想を主軸とした「ソーシャルビジネス」による業界の未来を見据えた支援で、もうひとつが途上国支援・地方創生領域といった、はじめから経済性だけを求めずに人とのご縁を価値とする「ソーシャルコミュニティ」領域の展開です。これら、ビジネスとコミュニティの両輪を回すことで、人と人との結び目の価値を高め、心豊かな社会をつくることを目指しています。
私は20歳で起業し、2社の創業に携わった後、株式会社じげんに入社しました。じげんでは経営企画室、求人事業部長を歴任したところ、2014年にリジョブをグループ化することになり、それに伴い代表者を決める話になったときに、起業経験があった私に「代表をしないか」というお話がきたという流れになります。
–なるほど…!そこに抜擢されたときはすぐ代表になることを決心されたんですか?
最終的には決心しましたが、お話をいただいた直後は様々な葛藤がありすぐにお返事はできませんでした。そんな中でも経営者になろうと思った決め手は2つあります。
1つ目は、リジョブの事業モデルに魅力を感じたからです。
じげんでは、大手の求人メディア企業様がお客様であることが多く、ビジネスモデルの特性上多くの方に一度に広く情報をお届けすることができるメリットがある一方で、エンドユーザーに対する距離があり、関わり方が間接的だと感じていました。一方で、リジョブのビジネスモデルは「企業様と求職者様を、求人メディアを通してダイレクトに結ぶ」形ととてもシンプルです。エンドユーザーであるお客様との距離がすごく近くて、より直接的な形でお客様に貢献できると感じたことが決め手の1つでした。
2つ目は、事業自体に業界課題を解決し、社会に貢献できるポテンシャルを感じたからです。憧れから美容業界に携わる方が多いはずなのに、離職率が高い背景にはおそらく業界特有の構造や課題があり、代表を引き受けるならば、事業によってそれらの課題を解決したいと考えていたのです。当時のリジョブは今より規模は小さくとも、既に業界トップクラスに位置するポジションにありました。サービスをご支持いただき、創業数年で業界トップクラスとなりえた実績やブランド力を強みとして、美容・ヘルスケア業界のあり方を変革できる可能性があると感じたことから、最終的にオファーを受けることを決めました。
–一度起業した経験があったからこそオファーを受けられたのでしょうか?
逆ですね。怖さを知っていたからこそ葛藤し、すぐに返事ができませんでした。もし起業経験がなかったらチャレンジの機会としてすぐ返事をしていたかもしれませんね。一度会社を倒産させた経験がつらい記憶として残っていたので、「私で大丈夫なのかな…。」という気持ちもありましたし、その怖さから迷いが出ていたと思います。
以前創業した会社では、「利益追求」を拠り所とした経営を行い、お客様や働くメンバーのことを考え切れなかったのだと思います。倒産の経験から「長く存続する企業とは、どんな会社か?」を真剣に考えた結果、行き着いたのが「より多くの人に貢献し、必要とされる会社」でした。
業界課題に向き合い、会社としても成長し、業界とともに持続可能な発展をしていく。迷いや葛藤もありましたが、「チャンスをいただくからには、今度こそ社会的意義のある会社を創りたい」という思いで代表を引き受ける決断をしました。
-これから事業を伸ばしていくにあたって課題になりそうなポイントはありますか?
まず大切なのは「お客様のニーズの変化を読み解くことの徹底」です。
例えば数年前のコロナ禍は美容業界にも大きな影響を及ぼし、私たちも業績が停滞しました。コロナの流行はこちらがコントロールできなかったことは事実ですが、一方でコロナ禍でもサービスを使い続けてくれていたお客様もいましたので、その違いや使い続けてくれている理由にフォーカスしてニーズを深掘りしていれば、より早くお客様に選ばれるサービスを提供できたのではないかと思います。この経験からも、常に「お客様のニーズの変化を読み解くこと」にフォーカスすることが必要だと考え、サービス開発に活かしています。
–具体的にはどのようなことをしていく予定なのでしょうか?
「お客様と求職者様双方のニーズを理解すること」と「ニーズを叶えるサービスを開発すること」の両輪で考えています。
企業様と求職者様の間に立つリジョブが双方のニーズを常に理解し、ニーズを叶えるサービスを開発し続けることが、業界貢献にもつながると考えています。そのために社内には企業様・求職者様と向き合うためのチームがあり、1回あたり60~90分をかけて、ニーズを丁寧にヒアリングしています。サロンワークをしながら採用活動を行うオーナー様向けの「採用管理アプリ」の開発や、地方在住求職者様向けの「通勤圏内での求職活動を応援する機能」のアップデートなど、ニーズに寄りそうサ―ビスが生まれ、採用マッチングにつながっています。
また、私たちのサービスを利用される求職者様は約70万人いらっしゃり、求職者様の求人メディア内での行動変化などから読み取れる、大きな変化や動きもあります。このようなマクロ的な視点と、一人ひとりに寄りそう手ざわり感のあるサービスづくりを今後もうまく機能させていきたいですね。
–鈴木さんが経営をする上でこだわっていることはなんでしょうか?
事業に社会的意義を持つということとともに、こだわっているのは「同志的結合がある組織づくり」です。
世の中には様々な「結びつき」が存在していますが、私はその中で最も強い結びつきが同志的結合だと考えています。以前は、事業を拡大していくために即戦力になる高スキルの人材を採用したいと考えていましたが、たとえスキルが高くとも、価値観や考え方の方向性が異なると、1枚岩の強固な組織になれないという経験をしました。ですので、スキル以上にビジョンへの共感や価値観や考え方、「自分たちの力を誰かのために役立てて、世の中をより良くしていきたい」という志がマッチしている人材を採用していくことにこだわっています。ここは、持続的に会社を成長させていくためにも、経営上絶対に曲げることのない1つのこだわりです。
「短期ではなく未来を見据えた経営者視点をもって、業界と会社にとって、本質的で最適な意思決定をすること」です。
たとえば私がリジョブ代表に就任したとき、初めに取り組んだのは「全社員との面談」でした。新しい経営者として考えを押し付けるのでなく、リジョブの皆が培ってきた価値や文化を理解した上で、カルチャーとして長く残したいと考えたのです。そこから浮かび上がった「世の中に対する当事者意識の高さ」「チーム力」といったリジョブのもつ価値をもとに、CIやソーシャルビジョンを策定しました。この面談での社員の声から、業界・社会貢献につながる3つの新規事業も立ち上げています。
また、ここ近年ではコロナ禍に真っ先に、メンバー全員の雇用継続の意思決定をしました。これは、会社で働くみなさんを同志と思うからこその決断です。その後、短期的には経営状態の苦しい時期もありましたが、
希望を形にするために、「常に健全な危機感を持ち続けてほしい」と伝えたいです。
経営者には大きく分けると2つのタイプがあって、「危機感を煽るタイプ」と「希望を見せるタイプ」に分けられると思っています。私は危機感を煽るのではなく「希望を見せていくことでみんなに火をつけたい」と考えています。「こんな未来を創りたいよね」「こうなったら嬉しいよね」と希望のある未来を常に共有しながらこの10年間を走り抜いてきましたので、今後もそういう経営者でありたいと思います。
一方で、競合他社が様々な武器を持って戦いを挑んできている中で、我々はそれに対して危機感を持ちながら、美容業界貢献の先駆者としてお客様のニーズに寄り添い、お客様に選ばれるサービスを提供し、選んでいただくことに向き合う必要があります。
あくまで創りたい未来のために「健全な危機感」を持ちながら事業と向かい合っていく組織をつくりあげていきたいです。希望のある未来を語りながらも健全な危機感を持った強いチームにしていきましょう。
具体的な目標というよりも、「すべての人が未来に希望を持てることにつながる取り組み」に社員皆でチャレンジし続けたいと思っています。
現在の日本は、危機感を煽るようなニュースを目にすることも多く、未来に希望を感じづらい人も多いと思います。ある団体の「自国の未来が今後良くなると思いますか?」という調査では、「良くならないと思う」という回答割合が調査対象の先進国の中で日本が最も多かったとも聞きました。これは本当に悲しいことですし、日本だけでなく、世の中全体の未来を思うとこのままでいいのかという思いになります。
ですので、今の時代を生きている者の責任として、これからの未来が少しでも良くなるように、未来に希望を持てる人が1人でも多くなるように、志をともにする仲間と共にリジョブグループとして努力をしていき、ソーシャルビジョン「人と人との結び目を世界中で増やし、心の豊かさあふれる社会を創る」を実現したいと思っています。
鈴木さん、ありがとうございました!
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