旭川市から全国、全世界へ送る「合板」を通して伝えるSDGs
広葉樹合板株式会社 山口 裕也
ビズストーリー編集長の大田原です。
「社長」による「社長」のための「社長」ストーリーをお届けするのがビズストーリーです。たくさんの社長の方から、様々な視点での学びを得て自分だけのビズストーリーを刻んでいきましょう。
今回は、私の地元である北海道旭川市にて、製造業領域の事業で活躍をされている山口様です。
- こんな方におすすめ
-
・二代目、三代目社長になる方
・SDGsに関する事業に携わりたい方
・ものづくり(製造業)だけにとどまらず幅広く展開を考える方
- こんなことが学べる
-
・3つの事業で会社伸ばす思考
・創業者との関わり方
・都心で働いた上で地元に戻りお仕事をされる方のマインド
新しい働き方を取り入れる人々の生活を合板の力で解決する
事業内容について教えてください。
元々は合板の卸売りから始まった会社なんです。基軸となるのは、「合板」です。合板や化粧板を中心としたものを利用した、製作や開発などを色々な店舗の什器であったり、あるいは大手ハウスメーカーさんの建築部材であったり、この「giraffenap(ジラフナップ)」なんかもそうなんですけれども、卸売り・合板製造、製品企画開発の大きく分けて3つの顔を持っています。面白いぐらい、3つ全部がリンクしてるんです。全ての事業が繋がっていて会社が成り立っています。
–そうなんですね!ありがとうございます。ちなみに開発というのは、 貴社から「ご提案する」のか、「こういうのやってほしいです」と言われて、設計するとかなのかだと、どっちの方が多いのでしょうか?
両方あります。図面が出てきて作ることもありますし、我々が商品を開発することもあります。例えば、広葉樹合板で新しく立ち上げているブランドで「クリラボ」という、「クリエイト×エシカルをくらしに」をコンセプトとにしたものがあるんですけど、それに関して言えば、再生可能な木材、特に、北海道の合板を使った家具の開発を進めています。パーツごとに、ノックダウンで組み立てられるようなもので、それをサブスクで展開しています。
–サブスクいいですね!
はい。返ってきたものを、リペアやリユースして再利用し、最終的にどうしようもないものに関しましては、我々が什器の製造で必要になる新材などに使っています。その収益の一部を、植林事業に寄付していこうというようなコンセプトで開発を進めています。
–だから、SDGsってことですね!
そうですね。結局そうなんですよ、みんな、卸も、それから合板製造も、今の企画開発をする方も全部こう繋がっちゃってるんです。
-具体的に誰の、どういったお悩みを解決している会社と言えるのでしょうか?
時代もね、どんどん変わるから、悩みどころも変わってくると思うんですけど、じゃあ、さっき言った、「クリラボ」に関して言うと、「コロナになって家で、作業する方が増えた」からと言って「そのために、家具買うの?」みたいな。
-確かにそうですよね
例えば、企業さんなんかもそうですよね。いつ社員がまた自宅で、仕事する形になるかもしれない時に、オフィスに対して、その家具の需要を、そんなに投資していいのか?だとか、そういった時に、レンタルは元々あるんだけれども、ただのレンタルではなく、リユースできる方がいいよねとか。そういった部分ってあるんじゃないかって。
これ、コロナにならなかったら、その発想にもならなかったと思うんですけども、すごくエコにもなるし、国内産の間伐材も使っているし。結局、森を育てるためには、ある程度の木を伐採していかなきゃいけないだとか、それを今度切って、二酸化炭素をより吸う若い木を植えることによって、そのサイクルで、どんどん回していこうというような流れなんですね。
-そうなんですね、これでSDGsというところに結びついてとても納得できます!!
お父様から会社を継いで事業をされている理由を教えてください。
私、創業者じゃないんですよ。うちの父なんですよ。まあ、私も1人っ子なもんだから、「やらなきゃいけないな」っていうのもあった。最初は「仕方ねえな」って思いもあったけど、どうせやるんだったら一生懸命やろうという思いですかね。もちろんね、それだけの責任もありますしね、従業員もいるわけだから。会社を潰すわけにいかないし。
-何がきっかけで、お父さまの会社さんを継ごうと思われたのでしょうか?
きっかけねー。そこはね、もう、自然ですね。
-元々、東京で就職されてるわけじゃないですか。戻ってきた時に他の会社さんでお仕事されたのか、戻ってきた時には、もう今の会社で働いてらっしゃったんでしょうか?
戻ってきた当初から今の会社でした。もう本当に倉庫はホコリだらけになって、掃除や配達だとか、そんなことばっかりやってました。
–そんな時期もあったんですね…!それから山口さんご自身が社長になってからと、お父様が社長だった時だと、何か違いってあったりするんですか?
私の代に引き継がなきゃいけなくなるじゃないですか。このままでいいのかなと不安ばかりだったんですよね。当時は卸売りしかやってなくて、右から左に、「モノも流して、売る」っていうことで、バブルがはじけてもまだ材料とかは動いてはいましたが不安でしたね。
合板製造も、既製の家具屋さんとかに、モノがよく流れていたんだけど、それがね、既製の家具が全く売れなくなったんですよね。住宅ハウスメーカーが、収納付きの家にしてたりして。それでね、そのもの自体が売れなくなってくるわけですよ。そうなると、 工場を辞めるみたいな話にもなったのですが、せっかく作った工場を存続させるために色々と、歩き回るわけですよね。それでメインの仕事を、持ってくることができたんですよね。そういうことがあって、 今の工場が、息を吹き返したっていうか。
-今までの道内の市場だけではなく道外にも目を向けて事業展開し始めたということですよね
北海道で、ちょっとこれまずいよねっていうことで、「津軽海峡渡って商売やんないと、 これは絶対まずいぞ、この5パーセント経済は」そんなノリでしたよね、30代、20代の終わりぐらいの時はね。不安なので、親と金はないもんだと思うじゃないけども、そんなノリでなんかやってましたよ、父には後で報告するみたいな感じ。
-そんな中で、従業員さんの中で、反発じゃないですけど、「それはやりたくない、それはやる」どうこうみたいな会話ってあったんでしょうか?
もちろん、ありますあります。
そう。でも、結局動き出すじゃないですか。動き出したら、もうないですよね。仕事が回るわけだから、気づいたら数字になってるじゃないですか。もうその時点でなんもいま言えませんよね。そんなもんじゃないかなと。ですが、当時の社長(父)とは何度もぶつかりました。それでも小さな会社なのでそんなダラダラやってられないんです。逆に良い部分もあるのでスピードが速いという部分もありますよ。
-そうですよね、やっぱり他の方と違うなと思うのは、「起業家」なのか「創業者の方がいる」でも悩みが全然違いますよね。
めんどくさいですよ。ほんとね、何度も思ったもん。本当に自分で創業しちゃったらよかったんじゃないかって。それでも父が苦労しているのも知っているのでね。父は東北の高校卒業後、北海道の木材会社に就職して冬の寒い中、現場仕事をしてたわけですが、その会社がね、潰れるわけですよ。私が、2歳の時に、うちのお袋だとか、お袋の両親も面倒見てましたから。家族が食えなくなるじゃないですか、給料ないんで。それで、何をしていいかわからないまま、起業するわけなんだけども。ただ、ものを仕入れて売るっていう、何が大変かって、売ってもらえないんですって、仕入れ先から、信用ないから。
とりあえず、なけなしのお金を、親からとか借りて、それを資本金としてやってたみたいなんだけどもね、それが大変だったと。そんな苦労、私はしたことないんでね。だから、そういう意味で、本当に頭上がらないんだけど、でもこれでいいのかなだとか、これだったら1人で会社辞めてやろうかなとかね。そういうような時はありましたよ。
-それを乗り越えられた一番の要因というか、理由みたいなものはありますか?
若さです。大田原さんみたく、怖いものなく、どこでも行くみたいな。今この年になって、もうそこまでのパワーはないでしょ。若いからこそできたってことだと思います。
広葉樹合板だからできる、「3つの軸」で事業を行う大切さ
競争優位性について教えてください
-ここまで通して、広葉樹合板としての強みは何になりますでしょうか?
モノ売りだけではなく、モノも作って、開発もしてるということじゃないでしょうか。モノ作りをするにしてもね、材料の相場感って、わからなかったらいけないんですよね、我々はそっちを卸しでやってるじゃないですか、そういう意味では色々と有利ですよね。コストの削減の仕方にしてもですが、物を作るにあたっては特に強いと思います。
成長ドライバーになるのは何になりますか
-今後も事業を伸ばしていく中で必要なポイントは何になりますか?
やっぱり人ですよ。
-工場で働かれてる方もいらっしゃると思いますし、 本社の従業員の方もいらっしゃるかなと思うんですけど、どういう方がいればもっともっと伸びそうでしょうか?
それはもう大田原さんみたいな人です
-私ですか?(笑)ありがとうございます(笑)元気な人ってことで良いでしょうか?
でも実際そうだよ。自分も一度東京に出て仕事をしているからより感じるけど、若い優秀な人なんてそうそう出会えない。意識の違いは感じますね。
-若くて優秀な人が旭川市にいてくれると嬉しいですね。
確信のない「チャレンジ」には注意‼
自身の経験から他の社長に「これは落とし穴になるぞ。注意しろよ。」というアドバイスをください
私はチャレンジ精神って大事だと思ってるんですよね。 でも、チャレンジ精神を忘れずにはいいんだけども、一方で、「確信」はやっぱり必要ですよね。何かやるにあたって、人の話で、あれがいいだこれがいいだって言って、よく飛びつくような人がいるじゃないですか。それで失敗するじゃないですか。そういうのって、なんで失敗するか?って自分の確信がないまま人の真似をしているだけなんです。遊びじゃないわけだから、お金がかかってくるじゃないですか。
なので最初はちょっと小さい範囲でやってみて、「こういうもんなんだ」っていうのがわかって初めて、展開できる。チャレンジ精神はすごい大事だけど自分で肌で感じるものとしてやれるかやれないか、やるなら小さく初めて確信を得てからにしてみるのが良いです。
「もったいない」が信念・哲学
『企業哲学』について教えてください
哲学は「もったいない」です。もったいないという部分にすごいヒントがあって、例えば、規格外の野菜とかの話をよく聞きますが、今までは、無下にしてしていたやつを、使えないの?みたいな。そこから商売が生まれるんじゃないかなっていう部分で、全てにおいて、「もったいない」が世の中に溢れているから、もったいないを探せと思ってますね。
-確かに事業の3つの軸がある企業が「もったいないを探せ」と言われると完全にSDGsに基づいていてとても納得できますね。
山口さんの思う『社長』とは?
そうですね、まず健康じゃなきゃダメですよね。最近思いますもんね。いきなり死んだらどうしようかな、とかね。ということもそうなんだけど、経営は芸術なんじゃないかな。
経営っていうのは、 絵を描くような、みたいなイメージなのかなと思うんですよね。自分のイメージみたいなもの、描ける人間のことかな。まぁ、形だけじゃなくて、それにはいろんなものが含まさるんだけど、 従業員の喜んでる笑顔であったり、従業員の家庭などもひっくるめて、いろいろ組織としての、この絵を描けるようなものを想像できることができる人じゃないですかね。
山口さんが社長になる前に戻れるとしたらやりたいことややっておきたいことはありますか?
僕ね、やっぱ海外行きたかったよね。 海外の学校に行きたかったんだけど、現実問題として行けなかったんだ。海外ならどこでもよかったですね。
-どうして行きたかったんですか?
文化が違うのはもう当然じゃないですか。そうすると、 他の国の文化を見るってことは、それだけ日本の国の文化プラス、違うものを知ることで人よりも倍になるじゃないですか。それから、人間の付き合いっていうものもあります。他の外国の方と繋がるっていうこと自体が、財産になってくるんじゃないかな。
—メンバーに「本当は伝えたいけど、伝えられていないこと」等ありますか。
なんだろう。俺も全て話してるからね。
-とっても素敵ですね。
流石にプライベートの「これ、ちょっと言いたくない」くらいはあるよ、もちろん。でも「俺、馬鹿だわ。」とか自分の失敗談まで言っちゃうからね。参っちゃったわ。みたいな。本当に馬鹿じゃないの。社長みたいなことも話します。
-いいじゃないですか。それが聞けるって最高の環境ですね。
これからの夢や目標を教えてください
小さくてもいいから、「キラっと輝いてる会社」でいたいなと思っています。
まあ、色々あるよね。「売り上げ」「 従業員数を何人抱えてる」ところを誇れる人もいるし、確かに社会に貢献してることになりますからね。 だから、一概にこう、一言では言えないけど、「キラッ」としている会社でいたいです。
まとめ
山口さん、お時間いただきましてありがとうございました!インタビューの依頼前まで全く接点のない状態だったのですが、弊社の取締役が「これすごい!」とプレスリリースを発見したことがきっかけでした。そのあとTikTokで流れてきたワイドショーで旭川市の企業だと言うことを知りご連絡させていただいたんですよね。「地元の企業を宣伝したいんです!」と言う私の思いを聞いていただきまして、インタビューへご参加いただいたのですが、突然連絡してくるし旭川に帰るタイミングがあるので会いたいです!なんてとても失礼なことをしたなと思いつつ…(笑)インタビューのあとも気になったことを質問させていただきまして、もっと色々な方に広葉樹合板さんのことも山口さんのことも知ってもらいたいなと思いました。続編的なものを出したいです。私のレベルが上がった時にはまたレベルアップしたインタビューのお時間がもらえるように私自身が頑張ります。
広葉樹合板株式会社からお知らせ!
▼広葉樹合板株式会社 公式ホームページ
https://www.koyoju.co.jp/
▼”giraffenap”〜“立ち寝”という新しい休憩のスタイルへ〜
https://g-nap.com