ビズスト|BIZ STORY

 

時代の流れに合わせて繊細な木工小物で世界中の人を喜ばせる

株式会社ササキ工芸 佐々木 雄二郎

ビズストーリー編集長の大田原です。
「社長」による「社長」のための「社長」ストーリーをお届けするのがビズストーリーです。たくさんの社長の方から、様々な視点での学びを得て自分だけのビズストーリーを刻んでいきましょう。

今回は、木製クラフト製造・販売領域の事業で活躍をされている佐々木様です。

こんな方におすすめ
・自社ブランドを立ち上げたい方
・これまでの事業から派生した新規事業を考えたい方
こんなことが学べる
・企業ブランディングの考え方
・社外メンバーとの仕事の仕方

木工小物の大量生産を国内生産で解決する

事業内容について教えてください。

-歴史ある企業さんですが、改めて事業内容を教えてください!

1976年に創業した会社で、元々は家具の下請けの工場でスタートしました。 旭川市は家具の産地として有名なのですが、下請けとして部品作りをしています。主な取引先にタンスメーカーがあったのですが、当時クローゼットが登場してタンスの需要がなくなったことで当社の仕事もなくなるという状況でした。タンス作りで使う木材は結構良い木材使うんですけど、あのタンスに使えないような小さな破片は全部捨ててたんですよね。でもその小さな破片は小物だったらまだ使えるなっていうことで、小物作りがスタートしました。

-確かに旭川は家具の街ですもんね、東京事務所にも綺麗な家具が置いてありました。

気が付けばタンスメーカーの仕事が全然なくなってしまったので、小物作りだけをやろうということになったのが、ササキ工芸のスタートですね。
現在は木製の小物づくりを中心にやっていまして、ここ最近は人工大理石の加工もやらせていただいています。ブランドとしては「SASAKI」と「pirkamonrayke」という協業ブランド「supernova」という異素材加工のブランドの3つを展開しています。

-3つも展開されているんですか!ホームページ上に記載があったのは他のブランドということだったんですね。

先代から代替わりしてからの「ササキ工芸」

-小物に切り替えてやっていくとなったのは先代の社長の時からですか?

父の代からですね。私の父が創業者なのですが76年に創業して80年代に小物作りを始めました。私が入ったのが2002年なので、その頃には小物しかやっていない会社でした。

-2002年ということは佐々木さんは会社員をされてから入社されたのでしょうか?

元々旅行会社にいました。でも自分の家を継ぐっていう気持ちはあったので、継ぐ前に別の会社で仕事をしてから戻ってこようと決めていたんです。

-2002年から入った時は、会社員として入られたんですか?

はい。入社した時ってweb関係が始まりだした頃だったのですが、社内でweb関係はほとんどやっていなかったんです。それこそメールアドレスすらなかったので、そういうことをやる担当としてWEBのサイトオープンや メールのやり方、社内的な資料も全部手書きだったのをExcelやWordを使ってやるようにしていく業務でした。

-そうなんですか!当時はFAXやお電話で注文を受けていたということですか?

そうですね。今でもFAXでやりますけど、見積書とかも全部手書きとかだったので「あの時の見積もり」って言われたら、紙をめくりながらやってたんですよ(笑)でも、今だとデータで管理してるからパッとデータで出てくるようになるっているので、その先駆けのことをやっていた感じです。

-ありがとうございます!その時からどういったタイミングでお父様から佐々木さんに代替わりされたのでしょうか?

変わったのは今から12年前ですね。 それまでに色々と役職についてはいたんですけど、2011年に父が亡くなったので、代表に就任しました。

-そうなんですね。そのタイミングからの代替わりって社内はどういう感じだったんですか。

すでに10年ぐらいは会社にいたので、当然みんな次はこの人だろうっていうのは思っててくれたので、代が変わったことよりも 父が亡くなったことの方がショックが大きかったでしょうね。現役の社長だったんだけど、急に亡くなってしまったので。

-ありがとうございます。10年皆さん一緒に働かれていたと思うので正直そこまで反発とかはないと思うんですけど、自分が代替わりしたタイミングで大変だったことはありますか?

そうですね、父がやってた時の仕事のやり方を私になってから結構変えたんですよね。父もほんとに昭和の人間なので仕事を与えられたら、それが終わるまでやるのが当然だろうと。 それこそサービス残業みたいな形でもやりなさいっていうのが当時だったんですけど、私はそこがちょっと違うかなと思っていたので「仕事は時間内になんとかして終わらせること、終わらない分は仕方ないから次の日に繰り越しでもいいから残業はするな」という形にして行きました。そうすることで1日の密度が高まりましたね。正直それが合わないっていう人たちもいて辞めていきました。もう12年経ちますけど気が付けば3割ぐらいしか当時の社員は残ってないかな、あと7割は父の顔も知らない人ですね。

-すごい。実際のところ残業を減らすって結構難しいじゃないですか。その中で皆さん一緒に頑張ってやってきてて、今も3割の方がいらっしゃるっていうのはすごいことですよね。

だから協力してくれる人もいたし脱落していく人もいたし、そこは悲しいけど仕方ないなと思ってます。

雑誌「Pen」の表紙に抜擢されるほどの商品力はどこから?

-かなりの商品数があると思うのですが、デザインはどなたが考えられているのでしょうか?

元々は社内の作り手が考えていたんですよ。ただ作り手が考えるものには作り手目線で考えてしまうという弱点がありました。その時ある材料や金具だったり、たまたまそれがあったとか加工のしやすさでデザインするんですよ。

-それが一番作りやすいですもんね。

そうすると作り手にとってはやりやすいデザインなんですけど、使う方にとっては若干不便なデザインで上がってきたりとか、なんでこのサイズ?なんでこの形?っていうのがありました。そこをちょっと変えたいと思っていたので、3年ぐらい前から、新しくブランディングをすることで、今まであった商品を全部1回廃盤にして新しい商品で展開しました。外部のデザイナーさんに関わってもらって「作り手のことではなくてユーザー目線でデザインしてほしい」と話しました。

-そもそも1回廃盤にしたことが一番驚きです!!!

なので作り手にとってはすごくハードルが高まりました。デザイナーさんから上がってきたデザインに「こんなのできないよ」というのもあるんですけど、それをなんとかしようとするのが作り手としてやるとこだねっていうことで、 新たな技術の開発にも取り組んだり新たな部品を取り寄せたりとかしていますね。

今までの概念にとらわれないようなやり方で商品作りをしたっていうのは、そうやって商品を1回廃盤にすることによって新たな商品が今の軸になりつつあります。

-確かにサイトを拝見した時デザイナーさんのお名前ありました。外部の方に依頼するというのも1つの手段ですよね。

今はデザイナー4人ほどに関わってもらっています。

-そういうデザイナーさんってどういう繋がりで探してこられるのでしょうか?

デザイナーさんを紹介してくれたプロデューサーがいまして、1番最初はプロデューサーとの出会いからスタートしましたね。プロデューサーさんに「今うちこういうことやりたいんだけど」って話した時に、「こういうブランドを立ち上げるからこのブランドにふさわしい人を探してくるわ」ということで紹介していただいたんです。

-そのプロデューサーさんは、ササキ工芸の社員さんですか?

外部の人ですね。その方も別の会社のブランディング事業やっていてる繋がりで、「sasaki」の方で仕事の相談をいただけた方だったのですが、お話していくうちに面白い人だなと思ってこの人とちょっとやってみようかと思って始めましたね。

-そういう方はどこで出会うんですか?

当社が作っているのですが、プロデューサーの方が仏具屋さんのプロデューサーだったんですよね。木工の業界だとササキ工芸は有名で、当社でしかできないこともあったりするので、仏具屋さんから当社に物を作ってほしいっていう飛び込みできたんですよ。最初は断ったんですけど「それでもなんとかやってほしい」って言われて、色々と話してるうちに 仏具屋さんでこういうブランディングをやるんだっていうのを見て「だったら当社もちょっとやってみたいな」っていう。

-飛び込みでいらっしゃるんですか!?すごいですね。ちなみに外部のデザイナーさんがいらっしゃって製作は社内でということだと、どうやって社内外を巻き込まれているのでしょうか?

そこには若手スタッフも巻き込むようにしてて。30代の現場スタッフを巻き込んで商品開発は彼らと一緒にやるようにしています。できるだけデザイナーさんと彼らが話し合いをしながら、無理なところは無理、できるところはできるって言いながらやっています。 経営者だけがやってると社員としては「なんかやってるな」ぐらいになるんですけど、社員を上手く巻き込んでいくっていうところが大事かなと。

-確かに新しいものを任される側も嬉しいですよね。大事な新規事業や新しい製品を作るところで、任せてもらえるのはやりがいを感じますよね!

やりがいを感じてるのかプレッシャーに感じてるのか(笑)社内でそれに関わってない人たちもいるのですが、そういう人たちはやっぱり温度差があるので、そこをどうこれから解消していこうかなというところです。そこはもう結果を残していかないと多分無理だなと思っています。

実際に今やってることがドンドン認められて、売り上げも上がっていくと他の社員たちも「やってることって良かったんだね」って思ってくれるのかな。 今はまだ疑心暗鬼なところも多いので。

事業成長の秘訣はブランディング×時代背景

競争優位性について教えてください。

-どのようにここまで事業を伸ばしてこられたのでしょうか?

少しずつブランディングを意識し始めたっていうのは良かったのと、働く環境の改善の2点です。これからここ2、3年が大きく変わっていく時期だと思います。 商品を新しくしたのが去年今年にかけてぐらいなので、これからようやく成果が出てくる時期かなと。 それがうまくいけば、今まで以上の伸びができるかなとは思ってはいます。

-新しくいろんな人の意見と若い人たちにも巻き込んでやっていくということですね!

そうですね。製造業によくある話なんですけど、作ることは得意なんだけど売ることが苦手だったりとか見せ方が下手だったりとかもあるんです。今回はそこにデザイナーさんたちに入っていただいて 費用は確かにかかるけど、見せ方や伝え方がうまいなと思います。そのおかげで「Pen」という雑誌に掲載されたと思いますし、今までやってた仕事じゃ無理だっただろうなと思いながら、そういったところで成果が出てきてるのが嬉しいです。そこが新しい分野に今足を突っ込んでるなって感じはしますね。

-ありがとうございます!そうなってくるとこの業界で有名なササキ工芸さんの他社にはない強みってどこにあるのでしょうか?

当社の場合は木製の小物に特化した会社で家具は一切作らず小物作るんですけど、 結構機械化も進めてるので、ある程度量産ができる小物づくりをやることができるのが強みです。
昔は国内でも量産できる小物作りの会社さんはありましたが1990年代〜2000年ぐらいにかけて、海外で物を作って日本に持ってくるアウトソーシングが流行ったこともあり、国内で小物作りをするところはどんどん減ったんですよね。 

-確かに少し前までなら海外から輸入してくる方が安かったはずですもんね。

そんな中、今これだけ日本が円安になって海外からのものが高くなってるという状況で、じゃあ国内回帰って言っても今日本で作るとこはほとんどないので、当社にそういった量産の仕事が回ってくるっていうのは今の強みかなと思います。

自分の目指す夢はしっかり口に出すこと!

自身の経験から他の社長に「これは落とし穴になるぞ。注意しろよ。」というアドバイスをください

やっぱり自分1人で考えてるとダメかなと思います。周りにも意見を求めたりした方が良いです。あと、夢を叶える1番の近道って「言葉にする」って言われるんですよね。やっぱり自分が何したいかをちゃんと語る。言わないと何してるかわからない、何考えてるかわかんない。まだちょっと現実的に難しいから恥ずかしいからって言わないでいると叶わないんです。

絶対無理だと思ってても「こうしたいんだ」って夢を語るのが大事。それに協力してくれる人たちが自然と集まってくるし、自分もその気になる。 だから1人で抱え込まないで、どんどん周りに発信することが大事だと思います。

-ありがとうございます。私も言った方が良い派です!

「世界中の人たちに喜んでもらいたい」が信念・哲学

『企業哲学』について教えてください

-佐々木さんがお仕事をする上で大事にされていることを教えてください。

そうですね、世界の人たちに喜んでもらいたいと思っています。そのためには何が必要かって言ったら「より良いものを作る」「デザインを考える」「欲しいと思った時に供給できる体制を作る」ことも必要だし、 世界の人たちに自分たちの商品で喜んでもらったり安らいでもらいたいということをずっと念頭に置きながら会社をやっています。

-佐々木さんの思いは社員さんにどうやって伝えているのでしょうか?

そうですね、会社の理念に入れてるので毎週月曜日は理念の唱和をやってるので、言葉としては知ってると思うんですよね。ただそれが浸透してるかって言われるとまだまだかなと思います。それでも皆さん物だけではなくて、それに付随するパッケージや取説といったようなものをどうしようっていうのはかなり考えてくれたり、開けた時に人が喜んでくれる状態ってどうだろうっていうのを考えながらやってくれてるのは嬉しいなと思います。

-正直理念の浸透って結構難しいじゃないですか。ぶっちゃけただ理念を掲げているだけだったり言ってるだけで中身が見えてこない会社もあると思うのですが、月曜日だけでもみんなで読むっていいですよね。

これもインナーブランディングということでデザイナーさんにお願いるんです。もう少しブランドの浸透を図るためにやりたいんだっていうことで「ブランドブック」的なものを作ろうかなって話をしています。

これからの夢や目標を教えてください

世界に認められるSASAKIっていうものづくりの会社になって、世界から人が来る会社、そして働いてる人が誇りを持って働ける会社を作っていきたいなというのが目標です。

-ありがとうございます。もうPenの表紙に出ている時点でかなってますよね!

まだまだ第一歩ですよ。

まとめ

佐々木さん、ありがとうございました!新宿高島屋さんに出展されているタイミングだったので、旭川市の方と東京で会うという不思議な感覚でした(笑)記事の中では惜しくもカットさせていただいたのですが「夢」や「目標」の話の時に「大田原さんは何がしたいの?」と私がインタビューする側なのに聞いていただいてしまいました。まだまだ私のやりたいことは点の状態なのですが、それでも色々な経営者さんとお話しする中で段々と点線になってきています(笑)あとは宣言した目標が叶えられるように学ばせていただいたことを実践していきます!話は戻しますが、旭川市は家具が有名な街です。ササキ工芸さんの繊細な木工の小物製品には脱帽しちゃいますよ!ぜひサイトを覗いてみてくださいね!

株式会社ササキ工芸からお知らせ!

▼ササキ工芸 公式ホームページ

https://www.sasaki-kogei.jp/

デザイナーとして石橋忠人氏を起用し、ユーザーの普段の生活に溶け込むような木製アイテムを製造・販売しています。文具、美容、テーブルウエア、玩具など多岐にわたり洗練されながらも使い勝手の良い木製小物たちですので、ぜひご覧ください。

 

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