株式会社カンディハウス 染谷 哲義
今回は、木製家具領域の事業で活躍をされている染谷様のビズストーリーをお届けします。
- こんな方におすすめ
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・二代目・三代目社長の方
・海外進出を考えている方
- こんなことが学べる
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・海外進出のきっかけ
・デザイン経営の考え方
株式会社カンディハウス 染谷 哲義
今回は、木製家具領域の事業で活躍をされている染谷様のビズストーリーをお届けします。
北海道産広葉樹を余すことなく有効活用し、「家具の聖地」と評される、家具木工産地・旭川の確かな技能・技術で、こだわりのデザインでものづくりをおこない、国内はもとより、海外24ヵ国で営業活動を展開しています。
文字通り、木製家具を製造・販売していますが、私たちは単なる物販ではなく、「心地よい空間と豊かな暮らしの提案」を大切にしています。レジデンシャルの家具だけでなく、オフィスや商業施設なども含めた空間において私たちの作る家具で豊かなライフスタイルとワークスタイルの提案を半世紀以上続けています。
-レジデンシャルのイメージが強かったですが、オフィスや商業施設用に向けた提案もされているのですね!
レジデンシャルの比率が大きいですが、オフィスや商業施設での需要も高まっていますね。
近年は、使う人が心地よく過ごせる環境づくりといった点から、住宅以外の空間でも木製家具への注目度が高まっています。多くの皆さまに当社家具に触れていただく機会を生み出したいという背景から、公共空間などへの提案も広げていきたいと考えています。椅子だと少し腰かけたくらいでは座り心地の良さは中々伝わりにくいので、我々としては3分~5分くらいの時間座っていただいてその座り心地を感じていただくことをおすすめしておりますが、みなさんちょこっと座ってみて次に行くみたいになりがちです。
-確かに私も座ったその瞬間に試した気になっていました。そのために公共空間にということですね?
そうです。例えばレストランなどで2時間程度のコース料理を召し上がる際に当社の椅子に座っていただいて機能や座りやすさを感じていただいたりとか、そういうところから製品の良さを感じてもらいたいなとも思っているので、今後様々なところに広げていきたいですね。
-ありがとうございます!ショップの展開も国内外へ幅広く行われていますよね。
そうですね。日本で言うと北は北海道の旭川や札幌、南は九州の福岡まで東京や関西地方も含めて全国に展開しています。
やはり家具は長きにわたってご愛用いただくことになるので、実際に見て触れて、ご納得いただくことを重視しています。また、「長く愛される家具を旭川から世界へ発信する」という創業時からの理念があり、1984年にアメリカ、2005年にドイツ、その後アジア・オセアニア地区のマーケット拡大を図りました。現在は、アジアオセアニア地区・中米・ヨーロッパ地区を含めて24ヵ国に展開していますね。
やはりお互いに納得した状態でビジネスを展開していかないと良好なビジネスが継続しませんので、新規開拓時には取引先候補のディーラーをもちろん訪問しますし、逆に先方にも旭川へ来ていただいて、当社のものづくりの現場を見て、体感いただき、関わるスタッフとリアルにコミュニケーションを取ってもらいながら、カンディハウスという会社とブランドについて、直接肌で感じて理解してもらうようにしています。
-海外ビジネスを始めるにあたっては難しそうなイメージがありますが、どのように始めるのですか?とっかかりは?
それぞれに成り立ちがありますね。ドイツで行われる世界最大級の家具展示会・ケルン国際家具見本市に2005年から14年連続で出展していたことがアジア地域での最初の大きなビジネスにつながりました。
出展3年目の2007年に韓国・済州島のリゾート施設開発の仕事を請け負っていた韓国のディーラーが見本市に訪れました。その施設を担当する建築家の方が日本テイストの家具を探されていて、そのとき当社が新作発表した、ドイツの著名デザイナーであるペーター・マリー氏デザインのグローバル戦略シリーズに興味を持ってくれました。そこからトントン拍子に話が進み、大型プロジェクトに発展しました。
-そこが始まりだったんですね!タイミングが嚙み合った瞬間ですね。
そこからしばらくはアジアでのビジネスを広げることはできなかったのですが、2013年、現会長の藤田が社長になった際にアジア市場の本格的な開拓の必要性を強く感じていたこともあってアジア進出を加速していく流れになりました。
発展都市で可能性のあるインテリアショップをリサーチして、そこから開拓営業を推進しました。開拓が進み、新展開国が二桁に到達する頃には、新たなディーラーから「カンディハウスとビジネスをやりたい」「カンディハウスブランドを扱いたい」と逆指名の話が来始めました。今後も、世界へのブランド発信と更なる国際市場の拡大を目指してゆきます。
-では、今後は海外に目を向けることをメインにされるのでしょうか?
創業の理念でもあるグローバル戦略は継続します。現在、販売チャネルのシェアは輸出が12%で、まだまだ国内比率が高い状況です。
知名度やブランド力も不足している海外展開にはコストもかかりますので、国内のビジネス展開の足場をしっかり固めておく必要があります。ただ、日本の人口減少等でマーケットが縮小してから動いても間に合いませんし、近い将来の市場の確保という点でも、国際事業への積極展開は必須と考えています。
-染谷さんがご入社されたのってもう25年以上前ですよね。
もう29年になりますね。
-すごい。入社されて約30年。いざ社長になるとなったときに大変だったことはありますか?
先ず直面した大きな課題は、新型コロナウイルス感染拡大による様々な影響です。
社長就任直前の2019年、2020年は営業部門の責任者として東京に赴任していました。2019年は業績も上昇基調で、2020年もステップアップしていこうとしていた矢先にコロナ禍に…。自社の出勤制限はもちろん、全ての得意先の営業、販売アクションに制限がかかり、自社の事業継続可否の危機感とマーケットを預かる責任者として、大変苦しい思いを感じていました。
-その後に代表になられるわけですよね。
はい。その後の2021年春に代表社長に就任しました。
お祝いの言葉もたくさんいただきましたが、コロナも収束していませんでしたので、「厳しい時期に就任したね。頑張って。」といった励ましの声がむしろ多かったです。タイミング的にそういうものなのかなとも思いましたが、それくらい先行きが不透明で、社会的にも不安要素が溢れていました。元来の楽観的な性格が功を奏してか、できるだけ前を見据え落ち込み過ぎず、3年間「全社一丸」を合言葉にスタッフ皆と課題に取り組んできました。
-でもここを乗り越えられたのはすごいな…と感じます。
2020年はやはりコロナ前の業績が好調だった頃と比べると2割ほどダウンしましたが、そこから一歩一歩復調し、昨年ようやく2019年の業績を上回る結果で終えることができました。
まだまだ課題は多いですが、改めてスタートラインに立った感覚を覚えます。
-これから事業を伸ばしていくにあたってやった方がいいこと・効果がありそうなことってありますか?
毎年更新している「経営基本方針」に集約しています。今期も6項目定義しましたが、特にその中の3項目についてお話しします。
1つ目は「世界トップクラスの人づくり、ものづくり企業を目指す」です。
実は昨年までは「世界トップクラスのものづくり企業を目指す」としていましたが、そこに「人づくり」を加えました。企業として最も大切なリソースである人材を重視し、教育・育成に改めて注力します。新たなパワーとなる新卒採用者、キャリア採用者はもちろん今いるスタッフのみんなにもっとスキルを高めてもらい、仮に当社から離れ新天地でチャレンジすることとなったときでも、活躍できる人材に育っていって欲しいと考えています。
-人材不足が深刻化してきていますし、人材の育成は企業として大切な使命ですね。2つ目を教えていただきたいです!
次にポイントとしている項目は「地球環境と調和するデザイン経営を実践する」です。
我々は製造・販売の会社になりますので、いわゆる色、もの、形を表すデザインに留めず、川上となる材料調達から開発・製造・販売・アフターサービスに至るまでの一気通貫の仕組みそのものがデザイン経営であると考えています。そのような背景でデザイン経営を推し進めているのですが、その枕詞に「地球環境と調和する」というカンディハウスのデザイン経営の特徴を表現しています。
最後の3つ目は「北海道の森から生まれる木製家具により心地よい空間を提供する」です。
これは取材の最初にお話しした部分になりますが、1番わかりやすく我々のソフトの部分でお客さまの暮らしの豊かさ、心地よさといった付加価値につながる提案ごととして取り入れていますね。
-なるほど…!会社として明確に定めていることで社員のみなさんにも浸透しやすいですね!まだまだ様々なことが変わっていきそうな感じがします!
可視化して多くの皆さまに「伝える」という手立てとして、実は今年1月にWEBサイトをリニューアルしました。公式ブランドサイトとオンラインサイトが別々だったものを合体させました。これで相乗効果を高めようと考えています。また、今秋にかけて本社のオフィスをリニューアルし、お客さまが見学可能なオープンオフィスとする予定です。
それだけでなく、工場と隣接する本社施設として、製造部門・間接部門のスタッフが“偶発的なコミュニケーション”を活性化できる仕組み、仕掛けづくりも考えています。来期以降の計画となりますが、段階を踏んで支店のオフィスエリアのオープンオフィス化も進めていきたいと思っています。
-染谷さんがお仕事をする上で大切にしていることはなんでしょうか?
「美意識」や「感性」を磨くことでしょうか。
抽象的と思われるかもしれませんが、単に美しさを求めるというより、仕事を進める中で自分にも周囲にもきちんと認めてもらう正当性みたいなところが美しく、そして整っていないといけないと思っています。イタリアの建築家、インダストリアルデザイナー、Ettore Sottsass(エットレ・ソットサス)は、「人間は、世界を知識ではなく、五感で知覚する」と語り、その言葉の解説として「人生、生命というものは感覚中心のもの。われわれが何かを知る上では、触ったり、見たり、聞いたり、という五感による知覚のほうが大きい。知識の蓄積は人を動かしはしないが、一つの感動が未来への一歩を踏み出させる。五感を揺さぶる旅の体験は私たちに何物にも変えがたい力を与えてくれるはず」とあります。
当社顧問の渡辺が社長時代、社員研修時の結びに度々唱えてくれて、伝承すべき当社の企業哲学の一つと捉えています。4月初旬に本社で実施した恒例の「新人・キャリア集合研修」の社長講話でも紹介し、研修レポートから、受講者の多くのメンバーから“共感” や目指す姿としてのコメントが挙げられ、手応えを感じました。
企業という法人そのものを代表して映し出される存在なのだと思います。
現・代表会長の藤田からバトンを受け継ぐ時に、「社長業は決裁業」との教示を受けました。リーダーとしての行動、発信、そして感性で方向を指し示さねばなりませんし、その責務を持って精進せねばと考えています。
-これまでのご経験から他の経営者の皆さんへアドバイスをいただけますか!
大前提、リスクヘッジは図らねばなりませんが、恐れて1歩踏み出さないより、挑戦する勇気が大切だと考えています。当社の創業の理念に位置付ける「社訓」の一節に、「ひとつ我々は常に、より高度な技術に挑戦する勇気を持とう」を掲げています。これは単に家具づくりの技能・技術を高めるだけでなく、企業活動を推進する全ての領域における“チャレンジスピリット”を表していると考えています。
当社は56年という半世紀以上の歴史があり、更に成長できるポテンシャルの高い企業であるということを伝えたいです。
その歴史の中で、変革期があったり、今なお不透明な時代ではあるけれども、創立50周年の時に創りあげたラグライン「ともに つくる くらし。 カンディハウス。」に込めた想い、「共創」の気持ちで、一丸となって共に成長していきたいですね。
カンディハウスを世界で最も愛される木製家具のブランドにすることです。
北海道の木材を余すことなく有効活用し、家具の聖地・旭川の確かな技術、技能とこだわりのデザインでものづくりをおこない、世界中のお客さまと永く寄り添う関係を築きながら、旭川発の木製家具のグローバルブランドとしての価値創造を目指します。
染谷さんありがとうございました!
コロナが流行し世界中が揺らいでいた時期を乗り越え、創業から56年経った今でも様々な変化を加えながら貪欲に成長していかれている姿に心を打たれました。
ぬくもりを感じる木製家具で世界中の家庭はもちろん、オフィスや商業施設、その他多くの空間で選ばれ、愛されるブランドになるお手伝いを些細ながらビズストでできたらなと思いました。
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